大判例

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最高裁判所第二小法廷 平成9年(行ツ)191号 判決

東京都港区高輪二丁目一番一三号

上告人

亡福本茂

東京都豊島区巣鴨一丁目三番二三号

右訴訟代理人弁理士

松田喬

東京都新宿区市谷加賀町一丁目一番一号

被上告人

大日本印刷株式会社

右代表者代表取締役

北島義俊

右訴訟代理人弁護士

赤尾直人

右当事者間の東京高等裁判所平成七年(行ケ)第二二四号審決取消請求事件について、同裁判所が平成九年五月一五日に言い渡した判決に対し、上告人から上告があった。よって、当裁判所は次のとおり判決する。

"

主文

本件上告を却下する。

上告費用は松田喬の負担とする。

理由

記録によれば、弁理士松田喬の訴訟代理権について証明がないから、本件上告は、無権訴訟代理人によって提起された不適法なものであり却下を免れない。

よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 根岸重治 裁判官 大西勝也 裁判官 河合伸一 裁判官 福田博)

(平成9年(行ツ)第191号 上告人 亡福本茂)

上告代理人松田喬の上告理由

1、上記上告事件に付き上告理由第1点とするところは、原判決は

「第2 当裁判所の判断

1 本件訴状における原告の表示は福本茂であるから、本訴における原告は亡福本茂であると解さざるを得ない.

2 そして、原告亡福本茂の訴訟代理人として本件訴状を提出した松田弁理士は、当裁判所の補正命令に対し、亡福本茂名義又は藤川徳子ら相続人名義の訴訟委任状を提出したり、追認を得る意思のないことを明確にしているから、上記補正命令に従う機会を与えるために期間を与えることは意味がないと認められる.

3 そうすると、当裁判所の補正命令にもかかわらず、松田弁理士の訴訟代理権につき書面による証明がなく、追認も得られていないものであるから、本件訴えは無権訴訟代理人によって提起された不適法な訴えであるといわざるを得ない.」

との判断を示している.

而して原判決は、「原告訴訟代理人を無権訴訟代理人と判断し、本件訴えは無権訴訟代理人によって提起された不適法な訴えであるといわざるを得ない。」と断定しているが、上告人訴訟代理人は特許法第六条、同第十一条、民事訴訟法第四十六条、同第八十五条に於ける各法律上、人格権的に可能対象であり、そして元原告福本茂の死去によっては消滅していない代理権を有して居り、それは、即ち、亡福本茂の現存している訴訟代理人である。その事実は本件無効審判請求の代理人が上告訴訟代理人であったことに徴し、多くを語らずして明瞭である。原判決は不正行為に付き特許庁と思いを同じくして難癖を付けているに外ならない。よって原判決は法律違背にして憲法第11条に違背し、到底取消を免れない。

2、同上告理由第2点とするところは、原判決は「本件訴状を提出した松田弁理士は、当裁判所の補正命令に対し、亡福本茂名義又は藤川徳子ら相続人名義の訴訟委任状を提出したり、追認を得る意思のないことを明確にしているから、上記補正命令に従う機会を与えるために期間を与えることは意味がないと認められる.」との判断を示しているが、

上記「亡福本茂名義又は藤川徳子」は本訴に対し全く無関係であり、原判決第1の3に依れば「これに対し、松田弁理士が平成7年12月14日に当裁判所に提出した訴訟委任状には、日付が平成7年9月12日と記載され委任者の欄に「社団福本茂事務所、代表者福本茂」と記名押印され、委任事項として「平成5年審判第22346号及び平成5年審判第21834号の審決に付き東京高等裁判所へ取消訴訟を提起するに関する一切の件等」と記載されている.」と認定しているが、原審決に係る請求人福本茂は死亡当時年齢70才に垂んとする男性であり、偉丈夫の男子であったが、その死亡3年前位から不治の疾病に罹患し、病次第に厚さを増し、その死亡到来1ケ月位の時死期を自知して、同人の液晶(liquid cristal)上の企業発展と未来の帰趨を慮り、上告人訴訟代理人と相談の上「社団福本茂事務所を設立し、自らその代表者となり、本件無効審判に係る委任代理人として上告人訴訟代理人を選任し(上告人訴訟代理人は勿論それ以前も本件無効審判に付き委任による代理人であった.)、本件無効審判に付き、福本茂の死去により特許法第六条、同第十一条、民事訴訟法第四十六条、同第八十五条に規定される法律上の代理人になった.よって、上告人訴訟代理人の上記亡福本茂死去後東京高等裁判所第18民事部へ提出した訴訟委任状に於ける「代表者 福本茂」の表示は亡福本茂死去後と雖も松田弁理士の法律上の代表権行使に付き、これは法律上認容すべき対称現象であり、即ち、上告人訴訟代理人が「代表者 福本茂」と上記訴訟委任状に表示したことは適法である。加うるに、原判決は松田弁理士は「当裁判所の補正命令に対し、亡福本茂名義又は藤川徳子ら相続人名義の訴訟委任状を提出したり、追認を得る意思のないことを明確にしているから、上記補正命令に従う機会を与えることは意味がないと認められる.」と判断しているが、斯くの如きは原判決をなした裁判所の独断専横の判断にして根底的に大なる誤謬を犯している判断であって、土台、本件訴訟の内容は原審原告側に於ても企業として百億単位を眼前に彷佛させて論断する対象であり、同被告に於ても各社新聞紙上を賑わした巨額の実施料を国内屈指の大企業その他世界から奪取することを推察させるものあり、利権追及者、また、多数暗躍し、特許庁長官、同審判長に巧智を巡して接近し、長官、審判長と利権追及者間に松田弁理士との寄与褒貶を語らった後、特許庁の風評よろしからずとの結論を以て上告人訴訟代理人方へ来訪するに至った揚句の果ての判決が原判決である.それは原審被告訴訟代理人を迎合した判決であり、原判決が指摘する藤川徳子ら原判決の云う相続人は上記社団福本茂事務所の設立存在に徴し本件訴訟には全く関係がなく、土台「追認」はこれをなす理由がない.更に、上告人訴訟代理人は上述した通り法律上の代理人であって、無権代理人ではない.然り而して、原審判決に係る原告は、上記「社団福本茂事務所」の定款を証拠物件として差し出してあるところ、裁判所より、その「原本を持参せよ」との訴訟指揮があったので、これに応じて持参したところ、見覧するの要なしとして持参した原本の見覧は拒否された。斯くして原判決は裁判所の独断専横、故事付け判断のみによって構成された憲法第十四条法の下に於ける平等性は無視脱却され、同条規定の上告人訴訟代理人の人格、ないし、人格権の信条、及び、社会的関係は侵犯されたものであって、同条違背の識りは到底免れない。

3、同第3点とするところは、原判決に対する訴えは特許法第178条第六項の規定に「審判を請求することができる事項に関する訴えは、審決に対するものでなければ、提起することができない.」との規定があり、この規定はすべてを原審決として本件訴訟の客体とすることを妨げるものではない.それは原審決の原告福本茂が死去すると雖も松田弁理士が法律上の訴訟代理人であり、その代理権は民法上の委任代理人と法律上の性質を異別にし、その代理権限は確定的の対象ではなく、原審決の目的に対応変化することは勿論、原審を継承し、あるいは、継承前、ないし、継承しなかった場合とで代理権の範囲が変動することを至当とし、原審東京高等裁判所の段階に於て少なくとも訴えの原告を無効審判の請求人とすることは、後に訴えを継承することの有無に拘わらず、代理権の消滅なき法律上の代理人が任意になし得るところである.これに対し、原判決は「…上記補正命令に従う機会を與えることは意味がないと認められる。」と認定しているが、上記特許法第178条第六項の規定に徴すれば、補正命令に接する謂われなく、然も決して無権代理人ではない.原判決に法律違背がある.

而して斯る違背は原審に於て、原告と被告が対立するとき、原判決の所論は全くの古事付けで具体的事実として憲法第十四条法の下に平等性なる規定から著しく脱却し、同条違背なること明確であり、到底原判決は取消を免れない。

4、同第4点とするところは、原判決はその第4項第8行から同第10行に亘り、「上記補正命令に従う機会を興えるために期間を與えることは意味がないと認められる.」との判断を宗しながら、同項第11行に於て「そうすると、当裁判所の補正命令にもかかわらず、…」との認定を示しているが、斯くの如きは原判決を見覧する者として補正命令を発したかの錯覚を生ぜしめんとする不正行為と推察するに十分なものがあり、その補正命令は真実には差出してない。そして、原判決の客体は「原審決それ自体」である.斯くの如き誤った判断は、故事付けであり、原判決の専横独断に外ならず、従って原判決の主観であり、これが認容されるときは正に憲法第十四条「社会的関係」に於て差別をしているに外ならず、よって原判決は到底取消は免れない.

5、同第5点とするところは、原判決には、原審決の背景がある.原審決は昭和35年4月1から無効審決を請求するに際し、利害関係は必要なしとして、その特許法の規定から削除された.よって原審決の判断した上記利害関係の条文削除あるも、猶、削除なかったそれ以前の条文と全く同じに無効審判請求に対し利害関係を必要とすると論断し、請求人(原告)の無効審判請求は利害関係なしとして却下をなしている.だが、この原審決の判断に対し、反対の事実を当て嵌め、かつ、利害関係を必要としない論理が成立するか、否かを追及するに、日本語の解釈として、條文が存在していたものを削除したと云うことになれば、日本語解釈の常道として、ないし、素直に解釈をすれば、あるいは、社会生活実践的事実に徴すれば利害関係必要なしとの解釈が論理(logic)として成立すること一点の疑いなし.これを原審決は「従前利害関係のあった時と全く同じの利害を必要とするとの判断をなしているが」その専横独断これより甚しきはなしと断言し得る横暴の行為であって、斯業の世人、巧言令色を捏造して特許庁長官、審判長等に暗躍を重ね、上告人訴訟代理人に対しては、或は二股膏薬を以て瞞着し、或は牽制して自己の利権獲得を目途する等の社会生活裏面の少なからざるものがあったが、元より上告人訴訟代理人は断固として、これらを排撃なし続け、その結果が原判決である.原判決は、土台、当裁判所の判断(4頁)2と同3との間に齟齬があり、その3に於ける「そうすると、当裁判所の補正命令にもかかわらず」の文句、及び、同3に於ける文章全体に徴し、日本文として齟齬があることは明確であり、換言すれば、上記2に於ては「上記補正命令に従う機会を与えることは意味がないと認められる.」と言い放って置きながら、上記3に於ては「そうすると、当裁判所の補正命令にもかかわらず、」と断言をして居り、同3に於ける他の記載を観るも、この断言を打ち消す文句は全くなし.然らば、上記2と同3との間に齟齬のあることは明確である.斯る原判決のノエシス面(フッサールの現象学を引用する.)を求めれば、原判決は原審決に呼応して故事付け論法を弄したものであって、原判決はその不正行為なること多言を要せず加うるに、上告人訴訟代理人が原審に於て法廷へ持参した「社団福本茂事務所」の定款に付いて見覧することを拒絶した(持参せよと指揮があったので、その原本を持参したが、持参すれば、見覧することを拒絶した.)。斯る事実を終始するに憲法第十四条法の下に於ける平等を著しく欠如し、その憲法第十四条違背なることは明確であり、その取消は到底免れない.

以上

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